地域司法の基盤整備に関する会長声明

 

2014年10月から9回にわたって行われた、当連合会及び最高裁判所における地域司法の基盤整備に関する協議を受けて、この度、最高裁判所は、①労働審判実施支部を拡大すること、②一部の裁判所支部及び家庭裁判所出張所における裁判官のてん補回数を増加させること等を明らかにした。

 

まず、労働審判実施支部について、これまでは、東京地裁立川支部及び福岡地裁小倉支部の2か所のみで実施されていたところ、2017年4月から、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部及び広島地裁福山支部においても実施すべく準備に着手するというものである。

 

2006年から導入された労働審判については、原則3回の手続において解決が図られるため、迅速な紛争解決手段として利用者からの評価も高く、近年は毎年3,000件を超える事件数で推移している。このような市民のニーズに適した制度を、更に3か所の裁判所支部においても実施するという最高裁判所の今回の対応は、身近で利用しやすい司法の基盤整備を進めるものであり歓迎する。当連合会は、今回労働審判実施が拡大された支部の運用状況及び各地の実状を検証し、その結果を踏まえて更なる実施支部の拡大を目指したい。

 

また、裁判官非常駐支部及び家庭裁判所出張所については、2016年4月から、松江地家裁出雲支部に支部長を置いて常駐化させるほか、静岡地家裁掛川支部、神戸地家裁柏原支部、高松地家裁観音寺支部、さいたま家裁飯能出張所及び岡山家裁玉島出張所について裁判官のてん補回数を増加させるというものである。

 

都市部と比較し人口規模の小さい地域においては、裁判所の開廷日が少ないために市民が迅速かつ適切な紛争解決を受けられない事態が生じている。市民のニーズに応えるために裁判官のてん補回数を増やす等の今回の最高裁判所の対応は、地域司法を充実させるものであり評価する。今後とも、当連合会は、各支部や出張所の事件処理状況や利用者の声等の事実に基づき、てん補体制の見直し等を求めていきたい。

 

さらに、担当裁判官や調停委員会の判断によって、裁判官非常駐支部における「臨時てん補」及び、通常は受付業務のみを行っている家庭裁判所出張所における「出張調停」が実施されることがあることについて、最高裁判所と認識を共有できたことも、今回の協議の成果である。

 

民事司法の基盤整備に関する多様な課題について、当連合会と最高裁判所が協議したのは今回が初めてのことであり、それ自体画期的であると考える。

 

しかし、これらの前進を踏まえても、地域司法の基盤整備に関し、取り組むべき課題は依然残されていると言わざるを得ない。

 

例えば、多くの事件を日常的に抱えている裁判官について、その増員は喫緊の課題である。また、合議事件取扱支部を拡大させること、家庭裁判所の調停室の不足解消及び待合室の拡大等、施設の整備を更に進めることが必要である。これらの人的・物的体制の整備には、司法予算の更なる拡充が必要であることは言うまでもない。

 

当連合会は、新たに労働審判が実施される裁判所支部が所在する地域の弁護士会と協力して、制度の趣旨に沿った適切な運用がなされるように最大限の努力を行う。それとともに、「より身近で利用しやすい司法」を実現するために、最高裁判所と真摯な協議を重ねることの重要性を確認しつつ、各地の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後も必要な取組を全力で継続する所存である。

 

 

2016年(平成28年)1月18日

日本弁護士連合会

会長 村 越   進