法科大学院全国統一適性試験に関する会長声明

 

 

去る7月6日、中央教育審議会法科大学院特別委員会は「適性試験の在り方に関する検討について(たたき台)」と題する文書を資料配付し、適性試験の在り方に関する検討を開始した。これは、政府の法曹養成制度改革顧問会議において、適性試験の在り方について検討すべきとの意見が出され、「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)においても、適性試験の在り方について文部科学省において検討するとされたことを受けてのものと思われる。


法科大学院制度は、多様なバックグラウンドを有する人材を広く法曹に受け入れるため、法学未修者を原則とする制度設計が行われた。その理念の下、法律科目試験を課さない入学者選抜方法としてアメリカのロースクールで実施されていたLSAT(Law School Admission Test)を参考に考案されたのが適性試験である。


しかし、適性試験によって入学者の適性が適確に評価できているかについては、試験実施から15年を経た現在においても、なお疑問の声は少なくない。当連合会は、「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」(2012年7月13日)において、適性試験の改善を図るために、各法科大学院が適性試験実施機関に対して適性試験の検証に必要な情報の開示を義務づけるべきとする提言を行ったが、同提言は未だ実現しておらず、そのため、 適性試験の有用性に関する全国的・総合的な調査も実施されないまま推移している。


他方で、適性試験の実施団体である適性試験管理委員会は、2015年度より、受験地を従来の全国17地区から14地区に減らし、うち3地区については他地区では2回実施される試験のうち1回のみの実施とする措置をとるなど、適性試験の受験機会は減少してきている。また、現在の適性試験が、5月後半と6月前半という近接した時期に2回実施されるのみであることに対しても、その時期以降に法科大学院への進学を志した者の当該年度における法科大学院受験の途を閉ざすことになっているとの指摘がある。しかし、近年の適性試験受験者数の減少による受験料収入の減少などの事情により、受験地区の維持・増加や実施時期の見直しは困難とされている。


このように、適性試験の有用性についての疑問の声が払拭されず、他方で適性試験の存在が法曹志願者確保の障害になっているとの指摘が少なくない現状を踏まえるならば、国は、法学未修者を原則とした現行制度の在り方を変容させることのないよう留意しつつ、適性試験について存廃を含めた検討を早急に開始し、速やかに結論を得るべきである。


なお、適性試験の実施を継続する場合には、地方の法曹志望者が法科大学院を受験する機会を奪うことのないよう十分な受験会場を確保するとともに、春と秋など期間を空けた時期に年2回以上実施するなど、受験機会を十分に確保するための方策を講じることが前提とされるべきことを付言する。

 

 

2015年(平成27年)7月31日

        日本弁護士連合会

       会長 村 越   進