預貯金口座をマイナンバーにより検索できる状態で管理することに反対する会長声明

 

政府は、金融機関に対し、預貯金口座情報をマイナンバー又は法人番号によって検索できる状態で管理しなければならないことを義務付け、金融機関が預貯金者等に対してマイナンバーの告知を求めることができるようにすることなどを内容とする法案を提出した。この制度の目的は、社会保障制度の所得・資産要件を適正に調査することや、適正・公平な税務執行の観点から社会保障給付の際の資力調査や税務調査の効率性を高めるという点にあると説明されている。

 

マイナンバー制度は、官と民における、社会保障と税分野の様々な個人データを、生涯不変の一つのマイナンバーで管理し、情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合して利用することを可能とするものであるが、これにより、市民の自己情報コントロール権は形骸化するとともに、諸外国で深刻な社会問題化しているように大量の情報漏えいや、なりすましなどのプライバシー侵害のリスクを更に高めることになる。当連合会はかねてより、高度情報通信が進展する中で、「プライバシー権を保障する基盤が整備された上で、利便さを追求できる社会」を実現すべきと考え、①プライバシー保護のために、まずは情報保有機関に分散されている個人情報の同一性確認が目的を超えて「容易には」できず、情報結合もされないシステムを確立した上で、情報の活用が検討されるべきであること、②オーストリアなどで行われている分野別番号での管理が参考となることを提言してきた。

 

その視点から、マイナンバー法については、民間分野での利用範囲の拡大を目指していることも含め、繰り返し、その危険性に警鐘を鳴らしてきた。預貯金口座をマイナンバーで管理することは、民間分野でのマイナンバーの利用範囲を著しく拡大し、預貯金口座における預貯金者の生活と密接な関連を有する預貯金情報(日付・金額・支払先などは重要な個人情報である。)全体も含めてマイナンバーによる検索が可能となり、情報漏えい等が発生した場合のプライバシー侵害のおそれは極めて重大である。他方、多くの金融機関において本人確認が容易ではない口座が多く存在し、全ての口座についてマイナンバーによる検索を実現するためには膨大な負担があること、金融機関の口座のみのマイナンバーによる検索では、結果として対象者や対象法人の一部の資産のみを把握することになり、むしろ社会保障における調査や税務執行が不公平になる可能性があるなどの制度上の問題点が生ずる。

 

以上のように、社会保障や税務執行の適正・公平の目的には合理性が認められるものの、預貯金口座に付番することは、プライバシー侵害の危険性が極めて高くなる反面、社会保障や税務執行の適正・公平に十分資するとは言えず、むしろ適正を欠き、不公平な結果を生ずるおそれがあり、手段としての合理性が認められない。

 

したがって、マイナンバーによる預貯金口座の付番制度化に反対するとともに、改めて分野別の情報管理の方法等を含めた「高度情報通信が進展する中で実現すべき社会」のあり方が検討されることを要請する。

 

 

 

2015年(平成27年)3月10日

        日本弁護士連合会

       会長 村 越   進