最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

 

中央最低賃金審議会は、近々、厚生労働大臣に対し、本年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。この点、最低賃金で働いた場合の手取り収入額が生活保護費(生活扶助+期末一時金+住宅扶助実績)よりも低くなるいわゆる逆転現象が5都道県で生じており、その解消は喫緊の課題である。加えて、本年度は、以下に述べるように、物価上昇傾向は明らかとなっており、もはや昨年までのような小幅な引上げで済ませることは許されない。


当連合会は、2011年6月16日付け「最低賃金制度の運用に関する意見書」、2013年8月2日付け「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」等を公表し、繰り返し、中小企業・小規模事業者の経営にも配慮した上での最低賃金の大幅な引上げを求めてきており、他方、政府も、本年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」及び「経済財政運営と改革の基本方針2014」において、中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金引上げに努めるべきことを明記しているところである。


総務省によれば、2014年5月の消費者物価指数は、前年同月比で3.7%の上昇となっている(6月27日公表)。これは、2014年4月から消費税が8%に増税されたことはもちろんとして、2012年末の政権交代以降、政策的に導かれた円安の影響により、食品や燃料などの価格が上昇してきたことによるものと考えられる。物価の急激な上昇は、全労働者の4割近くを占める非正規労働者(直近の総務省の統計では37.9%)を含む労働者全体の生活に大きな影響を与える。


現在の最低賃金時間額764円(全国加重平均)に、物価の上昇分3.7%を乗じると、約28円となる。仮に本年度、時間給28円程度の引上げをしたとしても、昨年から今年にかけて急激に上昇した物価相当額を補うことすらできない状態である。


そもそも政府は、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、2020年までの目標として、「全国最低800円、全国平均1000円」にまで最低賃金を引き上げることを明記している。ところが、2013年現在の全国加重平均は764円に留まっており、残り6年間で目標を達成するためには、1年当たり40円の引上げが必要である。かかる情勢を踏まえると、中央最低賃金審議会は、具体的に、全国全ての地域において、少なくとも40円以上の最低賃金の引上げを答申すべきである。


また、答申がなされた後は、各地の地方最低賃金審議会で各地の実情に応じた審議がなされることになる。各地の地方最低賃金審議会においても、以上のような状況を踏まえ、最低賃金額の引上げを図ることで、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。
 

 

 2014年(平成26年)7月24日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進