東京電力による原子力損害賠償紛争解決センターの和解案拒否に対する会長声明

 

原子力損害賠償紛争解決センター(「センター」)は、居住制限区域である飯舘村蕨平地区住民33世帯111名が行った集団申立てについて、本年3月20日に和解案の基本方針を提示した。これに対し、東京電力は、先行ケースにおける2世帯(1番目及び2番目に和解案が提示された世帯)に関し、4度目の回答期限に設定された5月27日、和解案のうち、不動産の全損賠償等の一部は受諾したが、①平成28年4月から同29年3月までの慰謝料(1人120万円)の一括支払、②被ばく不安に対する慰謝料の増額(妊婦・子どもは1人100万円、それ以外の者は1人50万円)、③遅延損害金の支払については受諾せず、和解案の重要部分を、事実上拒否した。

 

これまで、東京電力は、多くの申立事件において、審理を引き延ばし、和解案に対し回答を留保したり拒否するなどの対応をとってきた。これに対し、当連合会は、東京電力に対して、再三、自ら策定した新・総合特別事業計画等において掲げた「和解仲介案の尊重」を遵守し、被害者に対して迅速な賠償を行うよう求めてきた。しかしながら、東京電力は、飯舘村蕨平地区住民集団申立てについて、センターが設定した回答期限を3度にわたって遵守せず、かえってセンターに対し、和解案の再考を求めるなどの対応をとったことから、センターにより、審理を不当に遅延させていると判断され、和解案に遅延損害金を付加されたものである。しかるに、かかる不誠実な対応に終始した上で、今般、和解案の重要部分を事実上拒否したものであり、このような東京電力の姿勢は、賠償問題を「円滑・迅速・公正」に解決するために設置されたセンターの理念を踏みにじるものであって看過できない。

 

また、センターは、浪江町民による集団申立事件について、避難生活の長期化に伴う精神的苦痛の増大を理由として中間指針等で定める慰謝料に一律に加算することとする和解案を提示の上、5月30日を回答期限として設定し、5月26日に浪江町民はこれを受諾することを決定している。

 

さらに、センターは、宮城県丸森町筆甫地区住民による集団申立事件についても、福島県の自主的避難等対象地域と同等の賠償を認める和解案を提示しているところである。

 

今後、浪江町民による集団申立事件及び宮城県丸森町筆甫地区住民による集団申立事件についても、東京電力が本件と同様の対応をとるようであれば、センターの存在意義そのものが大きく揺らぎかねない。

 

したがって、当連合会は、東京電力に対し、新・総合特別事業計画における「東電と被害者の方々との間に認識の齟齬がある場合であっても解決に向けて真摯に対応するよう、ADRの和解案を尊重する」との誓約を守り、センターの和解案を尊重、遵守することを、重ねて強く求めるとともに、併せて、政府に対しても、東京電力に対し、強くその旨を指導することを求める。


 


 2014年(平成26年)5月29日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進