行政不服審査法改正に伴う出入国管理及び難民認定法改正案に対する会長声明

 

日本の難民認定制度においては、2013年、一次手続の難民認定率が制度史上最低となる一方、異議申立手続の事件処理の滞留が深刻化するなど、その抱える問題は多岐にわたる。

 

法務大臣は、私的諮問機関である出入国管理政策懇談会の中に、各界の専門的知見を有する者を集めた難民認定制度に関する専門部会を2013年11月に設置し、その結論も参考に難民認定制度の改革を進めるべく、今春から本格的な議論が始まったところである。

 

ところが、昨日衆議院で可決された「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の中には、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の難民不認定処分に対する異議申立制度の改正が含まれ、その内容は、単に「行政不服審査法の施行に伴う整備」の範疇を超え、実質的に、異議申立手続のプロセスと異議申立人の権利保障に重大な変更を加える内容となっている。

 

例えば、口頭意見陳述権を定めた改正行政不服審査法31条1項についての例外規定として、「申述書に記載された事実その他の申立人の主張が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないことその他の事情により当該意見を述べることが適当でないと認める場合」を挙げ、口頭意見陳述を行わずに異議申立を棄却できる場合を追加している。

 

難民該当性の評価を巡っては、迫害の主体を何と考えるか、迫害の内容の範囲をどのように考えるか等、政府の解釈が難民条約の解釈と適合しているか否かが訴訟その他で多く争われてきたところであり、一定の事実の存在を前提としても、難民該当性の評価については争いがあるところである。また、上記の「その他の事情」は、無限定な規定であり、申請の回数などの申請に至る事情等もこれに含めて解釈するとすれば、異議申立事件の相当数を、口頭意見陳述を経ることなく棄却することが可能になる。

 

このような入管法改正は、行政不服審査手続を審査請求に一本化し、不服申立人への手続的保障を十全なものとする行政不服審査法改正の本旨に沿わないばかりか、現在の難民不認定に対する異議申立制度において認められていた口頭意見陳述権を、更に後退させるおそれがあるといわざるを得ない。

 

もとより、前記出入国管理政策懇談会での議論が緒に就いたばかりの段階で、既にその議論に関して結論が出ているかのような法案が国会に提出されているという事態は、出入国管理政策懇談会での専門的かつ多様な知見に基づく意見を参考にして出入国管理や難民認定に関する政策を決定するというこれまでの方針にも反するものであって、看過できない。

 

よって、当連合会は、行政不服審査法の改正自体は推進すべきものと考えるが、同法改正に伴う関連法案としての入管法改正案は、行政不服審査法との最低限の整備部分を除いてこれを直ちに撤回し、出入国管理政策懇談会の議論その他の十分な検討を経た上で難民制度の改革を行うことを求める。

 

 2014年(平成26年)5月23日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進