裁判員法施行5周年を迎えての会長談話

 

裁判員法が施行されて5年が経過した。裁判員制度は概ね安定した運用が定着し、市民に着実に根付いてきたといえる。特に裁判員として参加した市民が、その職務に熱心に取り組み、水準の高い裁判を実現していることは、市民の司法参加の成果として高く評価できる。


裁判員制度の実施を契機として、公判審理において直接主義・口頭主義が実質化され、捜査機関によって作成された供述調書よりも公判廷での供述が重視されるなど、従前の我が国の刑事司法が抱えていた調書偏重という問題点の変革も推し進められている。また、公判前整理手続の導入により、証拠開示制度が整備された結果、当連合会が長年提唱している全面的証拠開示にはほど遠いとはいえ、被告人側に証拠開示請求権が認められた。


一方で、上訴審において裁判員の判断が十分に尊重されていないと窺われる事案が見受けられることや、制度の定着に伴い、裁判員の辞退率が上昇傾向にあることなどについては、今後対応を検討していくべきである。


また、我々弁護士にもまだ大きな課題が残されている。裁判員法が施行された直後から、公判廷での弁護人の活動は検察官の活動に比べてわかりにくいと指摘されてきた。裁判員制度の実施を契機として、裁判所からは、当事者の主張・立証を評価して判断する立場に徹するとの表明もなされており、当事者である弁護人がその役割を的確に果たすことが従来にも増して重要となっている。当連合会及び各弁護士会は、裁判員法施行前から裁判員裁判に関する研修に積極的に取り組んできたところであるが、この指摘を厳しく受け止め、さらに努力しなければならない。


裁判員裁判を含む全ての刑事裁判において、これまで当連合会が改革を求めてきた取調べの可視化(取調べの全過程の録画)、供述録取書に依存した捜査と立証からの脱却、証拠開示の拡大、事実等の存否についての審理と量刑についての審理を区分する公判手続の二分制度等はいまだに実現していない。現在、法制審議会「刑事法(裁判員制度関係)部会」「新時代の刑事司法制度特別部会」において、諸課題が議論されているところであるが、残されている課題は多く、一層の改革を進め、よりよい刑事司法を実現しなければならない。


当連合会は、今後も、弁護活動の充実に向けて、各種研修等への取組を進めていくとともに、刑事司法全般にわたる所要の制度改革が一刻も早く遂げられるよう、全力を尽くす所存である。

 


 2014年(平成26年)5月21日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進