成田空港における強制送還対象者の死亡事案に関する国家賠償請求訴訟東京地裁判決に関する会長談話

 

2010年3月22日に強制送還を執行されている途上にあったガーナ人男性が、成田国際空港から出発前の民間航空機内において、入国警備官複数名から制圧を受けた際に死亡した事案について、東京地方裁判所は、2014年3月19日、遺族に対する損害賠償を国に命じる判決を言い渡した。


本判決は、入国警備官らが行った制圧行為を「制圧行為の危険性の大きさが、制圧の必要性、相当性を明らかに越える」違法な行為であったと判断し、かつ男性が制圧行為によって窒息死したことを認定している。すなわち、訴訟において国側が行った、制圧行為は適法であった旨の主張及び男性の死因が病死であったとの主張を排斥したものである。


上記送還過程においては、入国警備官らは、航空機座席に着席させた男性に対して、手錠を手首のみならず足首にも施した上で、法定外戒具として用意していた結束バンドで手錠とベルトを連結し、更に手ぬぐいを猿ぐつわ状に施すなどして、男性に対して強度の拘束を加えていた。その状態下において、入国警備官らは、男性の呼吸の確保等を確認することなく、男性の首等を押さえつけて前屈させるという制圧行為を重ねて行い、その結果男性を窒息死させるに至ったものである。男性が上記制圧の際にほぼ全く抵抗をしていないことも踏まえるならば、その行為の違法性は重大であるといわなければならない。


本件死亡事案を受けて法務省入国管理局は、対象者の同意のない強制送還の執行を一時見合わせる一方、内部調査を行ったが、今回の訴訟における主張同様に、一連の入国警備官らの行為に関しては違法性はなかったものと結論付け、民間チャーター機による一斉送還を含めた同意のない強制送還の執行を2013年までに再開している。この点、本判決によれば、入国管理局の内部調査の結果自体が正面から否定されたものというべきであり、そうであるとすれば、入国管理局は、再度厳しく内部調査を行い、その結果を踏まえての関係者の処分や、収容や送還に関する法令の改廃などの再発防止策の見直しを行うべきである。


当連合会は、2010年9月から入国管理局との間で収容に関する問題についての協議会を設け、被収容者等の人権保障の改善に向けた協議を行っているところであるが、国が、本判決を真摯に受け止め、出入国管理手続における被収容者や被送還者等の人権を保障することを、改めて強く求めるものである。

 



 2014年(平成26年)4月4日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進