難病患者の生きる権利を支える医療費助成制度を求める会長声明

 

政府は、来年の通常国会での難病患者に対する医療費助成制度の法制化に向け、本年10月29日、難病医療費助成制度の見直し案を、同年11月1日、「小児慢性特定疾患」の医療費助成の見直し案(以下、合わせて「政府案」という。)を、相次いで発表した。


本年12月4日国会で批准承認された障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)及び2011年改正障害者基本法において、難病患者も「障害者」と明確に位置づけられ、人として尊厳ある生活が保障されるための医療・福祉面における十分な支援施策が求められる中、難病患者に対する医療費助成制度を法的根拠の伴う永続的な支援制度として構築すること自体は、一歩前進として評価しうるものである。


ところが、政府案は、障害者基本法等の上記趣旨に反し、研究対象としての難病対策の枠内で患者に負担増を強いるものであり、難病患者の権利を著しく侵害するものとして到底看過することができない。すなわち、政府案は、対象となる疾患を増やし、自己負担割合を3割から2割に引き下げるものの、従来負担を免除されてきた重篤な重症者にも自己負担を課し、また月額負担限度額を所得に応じ大幅に引き上げた。


とりわけ、全ての疾病につき「重症度分類」を導入して軽症者を助成対象から外すことは極めて問題と言わざるを得ない。


これにより、自己負担額がこれまでの何倍にもなる世帯が生じるだけでなく、一定の高額医療費負担があるために助成を受けられる世帯を除き、治療により改善された症状の維持または症状の悪化を防ぐために自己負担を強いられることになる等、難病医療費の助成対象から外された世帯では、急激かつ大幅な医療費負担増となる。


これでは、医療費以外にも介護費用や通院交通費等に多大な出費を余儀なくされる難病患者にとっては、医療の差し控えや生活状況の悪化を招く深刻な事態が危惧されている。


日々、病とともに生きていかなければならない難病患者にとって、医療とは、治療方法であるだけでなく、その症状を抑えることによって日常生活や通常の社会生活を送るために不可欠な継続的な支援であり、生活の質を担保するためにかけがえのないものである。このような本質を持つ難病患者の医療費助成制度においては、疾患の種類、病状の軽重等は本来無関係であり、どのような難病患者にも等しく医療サービスが提供されることによって、病気を持ちながらも共に社会に参加し、生きていく権利が保障されなければならない。


しかるに、今回の政府案は、難病患者も障害者として、制度の谷間を作らず、その生存権や個人の尊厳ある生活を平等に保障しようとする憲法、障害者権利条約、障害者基本法の理念と趣旨に反するものであり、極めて問題である。


患者団体から批判が相次いだため政府も本年12月13日、自己負担額の見直し案を公表し、一定の改善は見受けられるものの、基本的な考え方は変わっていない。当連合会も本年11月21日付け「社会保障制度改革国民会議報告書に基づき進められる社会保障制度改革の基本的な考え方に反対する意見書」でも政府の基本姿勢に対する問題点を指摘したところである。


人は誰しも難病に罹患する可能性があり、難病患者の支援策の充実は全ての人が安心して暮らせる社会の基盤の一つである。


当連合会は政府に対して、難病患者も障害者として、真に制度の谷間のない支援制度を構築することとした障害者権利条約や障害者基本法の趣旨に照らし、いかなる難病であっても、症状の軽重にかかわらず、等しく尊厳ある個人として生きることを保障する医療費助成制度とすることを求め、政府案の根本的な見直しを強く求めるものである。

 

2013年(平成25年)12月19日

日本弁護士連合会

会長 山岸 憲司