特定秘密保護法案の閣議決定に対する会長声明

 

本日、政府は、特定秘密保護法案(以下、「法案」という。)を閣議決定した。

 

当連合会はこれまで複数回にわたり法案に強く反対する旨の意見を表明してきた。そこでは、法案には、①保護対象となる「特定秘密」の範囲が広範・不明確であること、②「特定秘密」の指定が行政機関の長により恣意的になされうること、③指定の有効期間5年を延長し続ければ指定が恒久化すること、④内部告発や取材等行為についての処罰範囲が広く、厳罰に処するものであるため、表現の自由及び報道の自由や知る権利等憲法上の権利が侵害されること、⑤適性評価制度により重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること、⑥行政機関の長の判断で「特定秘密」を国会に対しても提出を拒むことができることになっていることにより国会の国政調査権が空洞化され、国権の最高機関性が侵されるおそれがあること等の問題を指摘し、本年10月23日に公表した意見書では、秘密保護法制を作る以前に、情報管理システムの適正化の実行、公文書管理法の見直しや情報公開法、国会法の改正などにより情報管理全体を適正化するよう、具体的に提案した。

 

これに対して、このたび閣議決定された法案では、9月26日に明らかにされた原案から次のとおり内容が変更されたが、当連合会が指摘した問題点の根本的な見直しはなされていない。

 

第一に、秘密指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものと」し(18条1項)、その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、(中略)優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)とされた。

 

第二に、有効期間の延長に関して、「指定の有効期間が通じて30年を超えることとなるときは、(中略)内閣の承認を得なければならない。」(4条3項)とされた。

 

第三に、知る権利等に関して、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(21条1項)とされ、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」(21条2項)こととされた。

 

しかし、18条については、「優れた識見を有する者」の意見を聴いて決められるのは抽象的な運用基準でしかなく、実際に行われる個々の秘密指定については、これをチェックする機能はなく、恣意的な秘密指定がなされ得ることに変わりはない。

 

4条については、指定期間が30年を超える場合には内閣の承認を必要とするとしても、指定権者である行政機関の長の判断を追認する形で内閣の承認がなされることが予想され、指定が恒久化してしまう危険性が高い。

 

21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定も、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が担保される保障は何もない。

 

また、同条2項の「専ら公益を図る目的」という主観的要件については、その有無はまず捜査側が判断することであって、どのようにも解釈可能である。しかも、「著しく不当な方法」という文言自体が非常に抽象的なものであることから、どのような行為が「著しく不当な方法」と評価されるのか事前に予測することが困難である上、やはり恣意的な解釈が可能である。したがって、訴追された場合に裁判所により最終的に「専ら公益を図る目的」があり、「著しく不当な方法によるものとは認められない」と認定されたとしても、恣意的な解釈・運用によって捜査対象となることに変わりはなく、それだけで取材に対する萎縮効果は測り知れない。
さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家、市民ジャーナリスト等には適用されず、不合理な差別となっている。

 

以上のとおり、これらの規定等の追加によっても特定秘密保護法案の危険性はなお高いものと言わざるを得ない。

 

国民の権利を侵害し、国会の最高機関性を侵す危険性を含む本法案について、これらの危険性が払拭されないまま閣議決定がなされたことは誠に遺憾である。当連合会が従前から主張している情報管理全体の適正化こそが急がれるべきであり、この適正化のための公文書管理法や情報公開法の改正がなされない状況で特定秘密保護法が制定されることに強く反対する。

 

 

2013年(平成25年)10月25日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司