憲法改正論議が高まる中で迎えた憲法記念日に当たっての会長談話

 

本日、日本国憲法が施行されてから66年目の憲法記念日を迎えた。



日本国憲法の改正手続に関する法律が3年前に施行され、衆参両院に設置された憲法審査会は、毎週のように憲法改正のための議論を進めており、来る7月の参議院選挙の争点の一つになるものと言われている。
しかし、最高法規として国家権力を制限し、人権保障をはかるための憲法を、国民の間で改正への気運の高まりのないまま、変えようとすることには大きな疑問がある。
とりわけ、現在の改憲論議の焦点が国会における改憲発議要件の緩和に重点が置かれていることは看過できないところである。憲法改正の発議に衆参両院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成を要件とする憲法第96条の趣旨は、国会で十分な論議を尽くした上で、大多数の支持によって発議されることを確保するためのものであり、世界各国の例を見ても決して重きにすぎるものではなく、当連合会はそれを過半数へ緩和することに強く反対する旨の意見を本年3月19日に表明した。
しかも、この発議要件の緩和の狙いは憲法第9条の改正にあるとも言われているところ、改正の前にこれまでの政府解釈の変更や、立法によって集団的自衛権の行使を容認する動きも政権内では強まっており、当連合会はその点についても本年3月19日に強く反対する旨の意見を表明した。



ところで、先日、全国各地の高等裁判所は、2012年12月に行われた衆議院議員総選挙について一票の価値の不公平さを放置している国会の怠慢を厳しく問いただし、全てが違憲ないし違憲状態とした上、さらには無効であると判決したものすらあった。国会はこのような違憲状態の解消こそ最優先で取り組むべきものである。そして、この解消は弥縫策によることなく、一票の価値の平等を真に実現するよう、抜本的な措置を直ちに講ずる必要がある。



また、東日本大震災から既に2年以上が経過したが、今なお大勢の被災者が憲法の定める基本的人権が十分に保障されているとは全く言い難い状況に置かれていることは問題である。そして、東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応も放射能汚染水の処理を含めて全く不十分なままであり、そのことから周辺住民の生存権は保障されていないと言うほかない。



当連合会は、憲法が最高法規として国家権力を制限する立憲主義の意義をあらためて確認し、全ての人々が個人として尊重され、人権が十分に保障されることを目指すものである。

 

2013年(平成25年)5月3日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司