精神保健福祉法改正に関する会長声明

 

本年4月19日、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下「本法案」という。)が閣議決定され、国会に上程された。



当連合会は、精神保健福祉法の改正に関し、2012年12月20日付けで「精神保健福祉法の抜本的改正に向けた意見書」を公表し、患者の権利擁護の立場に立った法改正を求めてきた。



本法案は、現行法の「保護者」の義務規定を全て廃止するとしており、この点は当連合会意見書に沿うものであるが、医療保護入院の要件につき、指定医1名による診察・判定を維持したまま、「保護者」の同意に代えて「家族等(本法案では、配偶者、親権者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。)のうちいずれかの者」の同意があれば足りるとし、患者の権利擁護制度である代弁者制度を法律上定めることを見送った。



しかも本法案は、指定医数を増やすこともなく、家族等のいずれかの同意で足りるとするものであり、従来の制度に比しても、安易な入院を増やすことに繋がりかねない。



入院医療の必要性は、慎重に判断されるべきであり、そのためには、指定医2名による診察・判定を必要とすべきである。このことは、「精神障がい者の保護及びメンタルヘルスケア改善のための諸原則(1991年国連決議)16の1項(b)」で定められており、本法案は、この国連原則にも反するものであるといわざるを得ない。指定医2名による診察・判定は、指定医総数と1か月間における医療保護入院者数の関係から見ても現実的に可能である。
また、家族等の同意を必要とすることは、患者と家族等との軋轢を生じさせる場合があり、家族に過度の負担をかけることになり、従来の保護者制度の弊害を実質的に温存するものであって、家族等の同意を要件とすべきでない。



さらに、代弁者制度の法律上の創設は、国際人権(自由権)規約第9条第4項の定める適正手続の保障を充たすために必須であるところ、心神喪失者等医療観察法の退院許可申立てにおいて必要的ではないものの国選付添人を認めており(同法第30条第3項から第5項)、その実現は十分可能なはずである。



以上のとおり、「家族等のうちいずれかの者」の同意で医療保護入院を認める一方、国費による代弁者制度を創設しない本法案は、患者の自由や地域で暮らす権利の制限を現行法より一層緩やかに認める方向へと改正するものであり、当連合会は、少なくともこの点について直ちに見直し、患者の権利擁護の立場に立った法改正がなされることを求めるものである。

 

 

2013年(平成25年)4月26日

日本弁護士連合会

会長 山岸 憲司