内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見書

 

2015年9月10日  
日本弁護士連合会


 

本意見書について

当連合会は、2015年9月10日に内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に対する意見書を取りまとめ、9月11日に内閣府消費者委員会委員長に提出しました。

 

本意見書の趣旨(見直しの検討を行う際の視点)

1 消費者契約法(以下「本法」という。)の私法実体規定は、もともと制定過程において提唱されていた第16次国民生活審議会消費者政策部会中間報告等に比して縮小した内容で制定された経緯がある。そのため、本法制定時の衆議院商工委員会及び参議院経済・産業委員会の附帯決議では、施行後の状況について分析・検討を行い、5年を目途に見直しを含めた措置を講ずることとされていた。


2 本法の施行後も消費者契約被害の発生は後を絶っておらず、現在もその被害の実情は深刻かつ多数である。特に我が国の消費者を取り巻く環境は、高齢化の進行、高度情報通信社会の進展とインターネットを使った消費者取引の拡大、消費生活におけるグローバル化の進展など本法制定後に大きく変化している。商品・サービスの多様化・複雑化を背景に、新たな消費者トラブルが多数発生し、消費者被害の内容も変化してきている。これら現在の消費者契約被害の実情、本法制定後の社会・経済状況の変化に適合した内容に本法の私法実体規定を改正することは極めて重要な立法課題である。


3 本法制定後の法制度や裁判例や議論の進展等を踏まえた法改正の検討が必要な具体的な論点については、内閣府消費者委員会が、1年半にもわたる検討作業の末に、2013年(平成25年)8月、「『消費者契約法に関する調査作業チーム』論点整理の報告」として公表している。
また、法改正の立法事実となり得る裁判事例、和解事例、相談事例などの具体的な消費者契約トラブルの実情については、消費者庁が、2012年(平成24年)6月、「平成23年度消費者契約法(実体法部分)の運用状況に関する調査結果報告」を公表するとともに、2014年(平成26年)10月、「消費者契約法の運用状況に関する検討会報告書」を公表している。
このように法改正の前提となる議論状況の整理や立法事実となり得る事実の調査作業は既に十分になされており、これらの準備作業の結果を前提に、現在の消費者契約被害の実情に適合した私法実体規定に現行法の内容を改正することは急務である。


4 本法の見直しの検討を行う際の視点としては、何よりも本法が「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ」「消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」ことを目的とした法律であること(第1条)が重視されなければならない。
すなわち、第一義的に重視されるべきは、本法の立法目的に規定されている「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」の是正であり、「消費者の利益の擁護」である。この点、事業者の適切な事業活動に対する配慮は必要であるが、消費者契約被害を招来するような事業者の不適切な事業活動は上記のような「消費者の利益擁護」の要請に反するものであって保護の必要がない。本法が目的とする「国民経済の健全な発展」は「消費者の利益擁護」がなされている公正な取引環境の中で実現されていくべきものである。


5 また、上述のような情報化、高齢化といった本法制定後の社会・経済状況の変化、現在の消費者契約被害の実情、本法制定後の法制度や裁判例や議論の進展等に適合した法改正でなければならない。


6 さらに、今回の法改正では検討時間との関係で今後の継続検討課題とせざるをえない論点があるとしても、近い時期における法改正が検討・実現されなければならない。 
当連合会は、2014年(平成26年)7月17日、消費者契約被害の現状、本法の施行状況や裁判例の蓄積、本法をめぐる国内外の議論の進展等を踏まえ、法廷・交渉・相談といった現場において日々消費者被害の救済にあたっている法律実務家の視点から見たあるべき消費者契約に関する包括的民事ルールの具体的内容を呈示するという観点から、「消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)」を公表している。あらためて上記立法提言のような法改正の早期実現を求めるものである。

 

 

(「中間取りまとめ」各項目への意見については添付のPDFデータをご参照ください。)