難病者の人権保障の確立を求める意見書

 

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2015年7月16日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

当連合会は、この度、「難病者の人権保障の確立を求める意見書」を取りまとめ、2015年7月28日付けで、内閣総理大臣、文部科学大臣及び厚生労働大臣宛てに提出いたしました。

 

本意見書の趣旨

日本国内の全ての難病者に対し、障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)を完全に実施し、また、難病者が障害者基本法の障がい者の概念に含まれる趣旨を徹底して、同法に基づく難病者法制度改革を実現するため、国は直ちに以下の施策を行うべきである。


1 国は、難病者の基本的人権を尊重し、障害者権利条約の求める共生社会の実現に向けて、障害者基本法に基づき、難病者を支援する各種法制度を有機的総合的に推進するために難病者に関する法制度を抜本的に改革すべきである。
かかる難病者に関する法制度の改革においては、少なくとも次の内容が実現されるべきである。


(1) 各制度の内容が、下記2の実態調査により判明した難病者の生活実態・障がい特性に即したものであること。


(2) 「難病者」の概念について、障害者権利条約を受けた改正障害者基本法に即し、次の考え方を採用すること。
「難病者」とは、「難病による心身の機能障害及び社会的障壁により、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」とする。
「難病」とは、「継続的(周期的・断続的を含む。)に医療を必要とする難治性疾患」とする。

 

(3) 難病者への差別を禁止し、難病理解を促進するための施策を講じること。

 

(4) 難病者の医療について、助成対象者の画定の在り方の抜本的見直し、重症度分類の撤廃及び低所得者の負担の無償化など、医療費負担の在り方を改革すること。

 

(5) 難病者の就労について、難病者が不当に差別されることなく働く権利を保障するため、難病者の特性に対応した合理的配慮の提供を具体化するガイドラインの策定を始めとする、労働環境の整備のための施策を講じるとともに、難病者を障害者雇用割当制度の対象に含めること。

 

(6) 小児慢性疾患に罹患している20歳未満の者(以下「難病の子ども」という。)に対する医療費助成について、疾患別の枠組みを撤廃すること。
幼児期・青年期から成人期に向けて、切れ目なく全ての難病が医療対象疾患となるよう制度を改め、難病の子どもが自律的に病態管理できる移行期医療のシステムを構築すること。
難病の子どもを養護する家族が求める支援を個別にアセスメントし、病態特性に合わせた柔軟な福祉制度を創設すること。
難病の子どものライフステージに合わせた適切な地域生活支援を行うサポートセンターを設立し、一貫した支援を制度化すること。

 

(7) 難病の子どもの教育について、障害者権利条約や障害者基本法の求める共に学ぶ教育に沿った学校教育法の運用をし、障がいや難病の有無にかかわらず、教育を受ける権利を保障し、地域とのつながりの中でその能力を発展させるための一貫性・連続性のある教育を提供すること。
また、難病の子どもが、地域の学校に在籍したまま院内学級を利用できるようにすること。さらに、学校内や通学における人的支援を拡充し、研修等により教職員・生徒の難病の子どもへの理解を促進するなどの施策を講じること。


(8) 難病者の地域生活について、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の「障害者」の定義を改め、疾患の種別、障害者手帳の有無を問わず、日常生活又は社会生活に制限を受ける者を全て対象とすること。
障害支援区分を撤廃し、社会モデルの考え方に基づく生活上の支障を基礎として福祉施策の必要性を判断する仕組みを構築すること。
病名を問わず、全ての難病者が難病相談支援センターを利用できるようにすること。


(9) 難病者及び難病の子どもに対する虐待防止について、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律及び児童虐待の防止等に関する法律の虐待の定義を見直し、医療機関従事者による虐待をそれぞれ「障害者虐待」及び「児童虐待」に加えること。また、難病に起因する虐待への対応方法を改善し、養護者による虐待について、養護者への支援の仕組みを作ること。


2 実効性のある難病者の法制度改革を実現するため、国は、早急に、難病者の医療、雇用、難病の子どもの生活、教育、難病者の地域生活、難病者に対する虐待等の実態調査をすべきである。特に、難病の子どもに対する、院内学級・訪問教育の全国的な実態や難病の子ども及び難病者に対する虐待の実態の解明は喫緊の課題とされるべきである。

 

 

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