消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)

 


icon_pdf.gif本試案全文(PDFファイル;938KB)

 2014年7月17日
  日本弁護士連合会


 

本試案について

当連合会は、2014年7月17日の理事会で消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)を取りまとめ、同年7月30日に内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長宛てに提出いたしました。

 

「消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)」の提言に当たって

1 消費者契約法の制定と意義
消費者契約法(以下「本法」という。)は、消費者・事業者間の情報・交渉力格差の是正という観点から、消費者契約に関する包括的民事ルールを規定する民法等の特別法として、2000年(平成12年)4月に制定され、2001年(平成13年)4月に施行された。

 

本法が施行されてから既に13年以上が経過した。その間に本法が消費者の権利実現のために果たした重要な役割、裁判例の蓄積、実務への定着等によって、今や本法は消費者の権利実現のために欠かせない重要な法律となっている。

 

2 実体法改正の必要性
もっとも、本法の施行後も消費者契約被害の発生は後を絶っておらず、現在もその被害の実情は深刻かつ多数である。特に我が国における急速な高齢化社会の進展、インターネットを使った消費者取引の拡大は、本法の制定当時には想定されていなかったような新たな消費者被害を多数生み出している。


本法の私法実体法規定は、もともと制定過程において提唱されていた第16次国民生活審議会消費者政策部会中間報告等に比して縮小・後退した内容で制定された経緯があり、本法制定時の衆議院商工委員会及び参議院経済・産業委員会の附帯決議でも、施行後の状況について分析・検討を行い、5年を目途に見直しを含めた措置を講ずることとされていた。


また、2005年(平成17年)4月に閣議決定された「消費者基本計画」では、「消費者契約法施行後の状況について分析・検討するとともに、消費者契約に関する情報提供、不招請勧誘の規制、適合性原則等について、幅広く検討する。」、「平成19年までに消費者契約法の見直しについて一定の結論を得る。」とされ、2010年(平成22年)3月に閣議決定された「消費者基本計画」では、「消費者契約法に関し、消費者契約に関する情報提供、不招請勧誘の規制、適合性原則を含め、インターネット取引の普及を踏まえつつ、消費者契約の不当勧誘・不当条項規制の在り方について、民法(債権関係)改正の議論と連携して検討します。」とされた。


さらに、2009年(平成21年)11月から開始されている法務省法制審議会民法(債権関係)部会における民法改正論議の中では、民法の原則規定に対する消費者契約の特則の要否・内容が論じられたが、それらは最終的に民法改正ではなく、消費者契約法の実体法改正に委ねられた。


加えて、内閣府消費者委員会は、2011年(平成23年)8月、「消費者契約法の改正に向けた検討についての提言」を発表したのみならず、2013年(平成25年)8月、「『消費者契約法に関する調査作業チーム』論点整理の報告」を公表し、消費者契約法の実体法改正が必要な具体的な論点を呈示している。


このように、現在の消費者契約被害の実情、本法制定時に積み残した課題、本法制定後の社会・経済状況の変化、法制度や裁判例や議論の進展等を考慮した場合、本法の私法実体法規定を現行法よりも充実させる方向で法改正することは必要不可欠かつ急務な立法課題である。


かかる状況の下、消費者庁において、2014年(平成26年)3月、「消費者契約法の運用状況に関する検討会」が立ち上げられ、いよいよ消費者契約法の実体法改正に向けた実務作業が始動した。

 

3 当連合会の従前の活動と今般の提言
この問題について、当連合会では、本法制定過程において「消費者契約法日弁連試案」(1999年(平成11年)10月)等を提言し、本法施行後も「消費者契約法の実体法改正に関する意見書」(2006年(平成18年)12月14日)、「消費者契約法の実体法規定の見直し作業の早期着手を求める意見書」(2011年(平成23年)11月24日)、「消費者契約法日弁連改正試案」(2012年(平成24年)2月16日)を公表し、本法の私法実体法規定のあるべき改正内容や早期見直しの必要性を提言してきた。


今般、当連合会が提言する「消費者契約法日弁連改正試案(2014年版)」(以下「本試案」という。)は、新民法典において消費者や消費者契約に関する特則規定が立法される可能性が極めて低くなった状況の下、消費者契約法の実体法改正に向けた実務作業が始動した現時点において、消費者契約被害の現状、本法の施行状況や裁判例の蓄積、本法をめぐる国内外の議論の進展等を踏まえ、法廷・交渉・相談といった現場において日々消費者被害の救済にあたっている法律実務家の視点から見たあるべき消費者契約に関する包括的民事ルールの具体的内容を呈示するという観点より、本法の私法実体法規定の改正試案を提言するものである。

 

4 本試案の前提ないし留意点
第1に、本試案は、法務省法制審議会における民法(債権関係)改正論議を視野に入れつつも、あくまでも現行の民法の規定の在り方を前提としている。また、本試案は、民法の諸規定の将来的な在り方については、特定の立場を前提としていない。すなわち、本試案は、民法改正論議において消費者契約に限定しない形での立法の是非が議論されている問題も含んでいるが(例:約款規制、情報提供義務など)、民法典における上記のような立法について積極的に反対する趣旨ではない。また、現行の民法の規定が改訂された場合には、それに伴う見直しが必要な提言内容を含んでいる。


第2に、本試案は、そこに列挙されていない消費者保護規定の立法の必要性を否定する趣旨ではない。本試案は、現代社会で立法化が必要な消費者契約に関する私法実体法規定の全てを網羅できているものではなく、当連合会は、今後も、本試案に対して頂戴する意見等を踏まえ、消費者契約に関する包括的民事ルールを定める法律としての本法の内容の充実に向け、検討と提言を重ねてゆく所存である。

 

 

 

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